2013年9月菅田巌 会長

蛇ロひねれば黙祷といふテレビ

渡辺信子

今年広島は68回目の原爆の日を迎えた。8月6日,ヒロシマは暑く,長い一日となった。
明日はナガサキの原爆の日,核のない世界を祈念する。

【オリバー・ストーン】
8月6日,松井一實市長の読み上げる平和宣言に目をつぶって聞き入るオリバー・ストーンの姿が映し出されていた。NHK BSテレビでは,BS世界ドキュメンタリー「オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史③原爆投下・米政権の真実」が,今朝放送されていた。また7日の中国新聞の朝刊オピニオンの欄には,来広したオリバー・ストーン氏へのインタビュー記事が掲載されている。「原爆が第2次世界大戦の終結に必要だった,というのはうそだ。歴史のうそを見抜くべきだ。その最たる例が原爆投下で,都合よく美化された歴史の神話を見抜き,真実と向き合うべきである」と語り,初めての広島訪問には,「一発の爆弾で瞬時に都市が吹き飛ばされる恐怖はどんなものとも比較できない。あの日の悲惨と,今日の繁栄との対照的な姿に強烈な印象を受けています。」と語っている。原爆投下は倫理的に許されないだけでなく,軍事的にも不要であった。

【アルテミス:ギャビーのディアナ】
7月20日から9月23日まで上野の東京都美術館で開催されているルーヴル美術館展一地中海 四千年のものがたり-を8月4日に観に行った。ルーヴルが誇る200点を超える収蔵品が,地中海を舞台に生み出された文化を生き生きと伝えている。注目は古代彫刻の至宝の一つとされるアルテミスで,衣の襞が透け通るような感触で,
清楚な容貌と肩に手をやる自然なたたずまいが美しい。アルテミス:信奉者たちから贈られたマントを留める狩りの女神,通称「ギャビーのディアナ」は1808年にルーヴルに収蔵されて以来,初めて館外に出品されたものである。ギリシャ神話で月の女神とされているアルテミスは,ローマではディアナ,英語ではダイアナで,この像は18世紀のローマ近郊のギャビーで,画家のハミルトンによって発掘されたので,通称「ギャビーのディアナ」と名が付けられている。アルテミスの兄は太陽の神アポロンで,兄妹で自然の運行や昼と夜の巡りを司っている。

【プロメテウスの火】
次に私が注目したのは,「ローマの石棺:人間の創造とその運命を表すティタン族プロメテウスの伝説」で,アレラテ,現在のアルル近郊で240年頃に作られている。粘土から自分の姿に似せて人間を作ったというプロメテウスの物語を石棺の側面に彫った作品である。沢山の神々の姿があり,プロメテウスが毛皮も牙も無い人間のために神々,へファイストスから「火」を,アテナから「知恵」を盗み出し人間に与え,さらに「芸術」と「科
学」を教え,逆境に陥った時の支えとして「希望」を与えた。しかし人間に火を与えたことを激怒したゼウスは,不死身のプロメテウスに過酷な罰を課した。肝臓を啄む鷲,ヘラクレスが彫刻されている。火は人類に恩恵をもたらす一方,兵器となり戦争を引き起こしており,「プロメテウスの火」は,原子力のように人間の力では制御できないほど強大でリスクの大きい科学技術の暗喩として用いられている。神話の世界ではプロメテウスはヘラクレスに助けられるまでに30年を費やしたという。フクシマも30年以上かかるといわれている。

【ル・グロー・デュ・ロア】
アルルはゴッホで有名であるが,いつもこの時期に思い出すのが,南フランス・モンペリエ郊外のル・グロー・デュ・ロアである。十字軍が船出した港町で,この時期バカンスでの賑わいを見せる。1976年(昭和51年)5月,フランス東部のナンシーから1968年製のシムカ1100で南下して,モンペリエ大学アリュ一教授の分院で研修を受けた6ヶ月間は,楽しい思い出である。ここを起点に,城壁に囲まれたエグ・モルト,法王庁の在ったアヴィニヨン,1世紀ローマ時代の水道橋のあるポン・デュ・ガール,古代闘技場のニームでの闘牛観戦,ゴッホが描いたアルル,白い馬とフラミンゴのカマルグ地方,サント・マリー・ド・ラ・メールの海水浴,アフリカへの玄関口マルセーユ,さらには北アフリカ・チュニジアまで足を伸ばした。もう一度訪ねて新鮮な魚介類のフランス料理をル・グロー・デュ・ロアで味わってみたい今日この頃である。先日の安芸地区医師会125周年,安芸地区医師会総合介護センター設立20周年記念祝賀会,並びに酒井シヅ先生の特別講演会には多くの皆様にご出席頂き有難うございました。100周年の記念の顕彰碑文「順天以医 救世以仁」を心に刻み,「温かく心のかよった地域医療を目指して」前進して行きたいと思います。

(平成25年8月8日)

《参考文献:日本人の歴史一世界との関わりから読み解く一第12回ギリシャ神話とヘレニ
ズム文明 芦沢壮寿〉

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