2013年1月菅田巌 会長

師走となり,本格的な冬の到来を迎え,お忙しい毎日だと思います。
去る12月8日,安芸区瀬野の「高田医院」院長高田洋先生がご逝去されました。享年
94歳。安芸地区医師会誌や「あき」に美しい写真をご寄稿していただき,有難うございま
した。ご冥福をお祈りいたします。

【安芸医学会】
12月2日第29回安芸医学会を開催し,平松恵一県医師会長に視辞をいただいた。多くの
演題,そして多くの医師,歯科医師,薬剤師,看護師,検査技師,放射線技師,介護士,
救急救命士等,コメディカルの皆様にお集まりいただき,また特別講演として広島大学大
学院医歯薬保健研究院応用生命科学部門救急医学教授の谷川攻一先生に「東日本大震
災から学ぶこと」と題して,昨年3月11日に発生した東日本大震災そして福島原発事故に
よる放射能汚染問題について講演していただいた。DMATについて,災害弱者への対応
や地震・津波・原発事故という複合型災害への備えの重要性をあげられた。今回の福島で
の貴重な経験をもとに今後の課題,それから方向性について述べられた。
企画,抄録集から会場設定等,学術委員会の担当理事の隅井先生をはじめ委員の先生方,
およびマツダ病院の奥平院長をはじめマツダ病院の関係者の皆様に,心からお礼を申し上
げる。

【人が生き,死ぬこと】
11月24日田済生会広島病院で,元国立がんセンター総長で,日本対がん協会の会長の
垣添忠生先生の「人が生き,死ぬこと」と題して,安芸地区在宅ケア講演会を開催した。
福田内閣の時,丁度医療費年間2,200億円削減でもめていた時である。垣添先生は平成
20年5月18日の読売新聞「地球を読む」の欄に「医療費抑制政策の撤回を」と題して投稿
されている。「小泉さんのやってきた混合診療の中身とは,ビジネスチャンスを企業に与
えるのが目的で,医療に市場原理を導入するのはおかしい,アメリカやイギリスで実証済
みの悪い政治を導入しようとした,また医療でお金を儲けようと株式会社を導入しようと
していた」「早く医療費抑制政策を撤回し,医療費亡国論を止めなさい,そして病気に
なっても安心な国に向かって一歩を踏み出すことが,この国の将来を大きく変える重要な
ステップの一つと考えるが,いかがだろう」という内容で結ばれていた。今は亡き前県医
師会長の碓井静照先生が「こんなに明確に言っていいのかなと思うほど書かれていた」と
述べておられたが,垣添先生は硬骨漠である。

また,垣添先生は平成22年の広島医学会特別講演で「わが国のがん医療,がん対策の問
題点」と題して講演された。がん対策はタバコと感染症対策が重要で,丁度タバコ代が
300円から400円になった時で,喫煙率を下げるためにタバコを欧米並みに600円~1,000円
にすれば効果的である。またHPV16型,18型感染と子宮頚がんの関係が確立されており,
かつ子宮頸がんの予防HPVワクチンが開発されたのに,我が国では国家としてワクチン
導入に及び腰なのは問題であると講演された。その講演後の「うを久」での懇親会で,安
芸地区医師会の在宅医療・在宅緩和ケアの取り組みについて話し,先生から年間の看取り
について聞かれたことを思い出した。予防HPVワクチンは平成23年3月から年齢が限定さ
れているが,公費助成により導入され,今日に至っている。

今回の講演では,「人の生死とその多様性」で,人間の強さ,弱さをすべて包摂して医
療はあると述べ,「妻を看取る日」では,奥様に「こんなにつらい治療を受けているのは,
あなたの為ですよ」と言われ,絶句し,医師として,総長としての苦悩,そして妻を失っ
た後の喪失と再生の記録を話された。最後にがん行政や政治と携わってきた立場から,が
ん検診率のアップとグリーフケアを医療システムの中に取り入れることが今の自分に与え
られた役目であると述べている。居合に取り組んでおられ,武士としての威厳を感じた。

【タウンミーティング 保健・医療に関する計画の策定】
12月3日にサンピア・アキで上記タウンミーティングがあった。佐々木県健康福祉局長
は,新たな広島県づくりに挑戦するために「人づくり」「安心な暮らしづくり」「豊かな地
域づくり」「新たな経済成長」をめざしていくと述べられた。新地域医療再生計画に基づ
き,丁医療情報ネットワークの基盤整備推進」と「がん対策日本一」の実現に,がん検診,
がん予防,がん医療の総合的な取り組みを強化することを事業として挙げている。主に第
二次健康日本21の推進基本方針である生涯を通じる健康づくりの推進の説明である。

特にタバコ対策については,第一部の時に話が出たが,やはり禁煙対策,喫煙室の設置
とか分煙対策は,事業者には大変である。この前の180回通常国会において審議入りして
いた労働安全衛生法改正案の職場での全面禁煙か,基準を満たした喫煙室設置による分煙
を事業主に義務付けるが柱となっていた問題では,「義務付け」は消煙し,「穏やかな努力
義務」となり大幅に後退し,改正に中心となったメンタルチェック義務化などの職場のメ
ンタルヘルス強化の内容を含む「労働安全衛生法の一部を改正する法案」は審議未了の為
に継続審議となっている。10月29日に召集された臨時国会では,赤字国債を発行するため
の特例公債法案や一票の格差を是正する衆参両院の選挙制度改革など重要法案を審議し
て,年内解散を巡り与野党が激突し野田首相は解散し総選挙に打って出た。どの政党が
勝っても,社会保障制度改革は求められている。
(平成24年12月)

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