2012年9月菅田巌 会長

聴診器胸に祈れり原曝忌

水原春郎

今年広島は67回目の原爆の日を迎えた。8月6日,ヒロシマは暑く,長い1日になった。
今日は長崎の原爆の日,核のない世界を祈念する。松井一実市長は東日本大震災と福島第
一原発事故では今なお避難している多くの被災者が前向きに生きようとする姿を67年前に
被爆したヒロシマに重ね,「私たちの心は皆さんと共にある」と広島宣言に述べている。
広島県医師会平松体制が発足して1カ月が経ち,軌道に乗ってきているが,今回経理・
財務の早期対応が必要であることから,広島県医師会「経理・財務特別委員会」を立ち上
げて,当医師会から八田副会長に委員として出ていただくことになった。新医師会館の地
下駐車場の経費や共済会の問題もあり,の県常任理事で担当の水野先生とともに大変であ
るが頑張っていただきたい。

さて8月は鎮魂とお祈りの季節であるが,今年は7月27日から始まったロンドンオリン
ピック開催で日本選手の活躍や世界のスポーツ選手の最速のスピード,最高の技が日夜テ
レビで報道され,熱帯夜とともに睡眠不足である。なでしこジャパンは明日アメリカとの
試合で果たして金メダルが取れるのか期待したい。
東京都知事の石原慎太郎知事は,3日の定例会見でロンドン五輪での柔道勢の苦戦が続
いていることについて「西洋人の柔道ってのは,けだもののけんかみたい。柔道の醍醐
味ってどこかに行っちゃったね」と報じていた。しかし女子57キロ級で優勝した松本薫の
目は試合前には獲物を狙うような鋭さがあった。Skillもあり,Willも伴って初めて優勝を
手にすることが出来たのではないか。
嘉納治五郎が1882年(明治15年)講道館を創設して,今年で130年になる。そして嘉納
団長が率いる日本選手団が初めて近代五輪(1912年ストックホルム大会)に参加して丁度
今年で100年になる。その記念すべきロンドン大会の柔道では,今回女子57キロ級で松本
薫の金メダルのみで,男子は0となり,都知事の発言となった。柔道は,国際化で体重別
となり「小能く大を制す」という醍醐味はなくなったといわれ,オリンピックでは100キ
ロ超級においてはもはや外国勢が強く,日本人には勝ち目はないようだ。世界選手権大会
ではまだ無差別級は残っているが。
さて今年4月から中学校体育で,武道が必修科目となった。今年1月17日の読売新聞に中
高生114人,柔道で死亡していたというショッキングな記事が載った。名古屋大学の内田
良准教授により,柔道事故で死亡した中学,高校生は1983~2010年度の28年間に全国で
114人(中学39人,高校75人)。中高ともに1年生が半数以上を占め,計14人が授業中の死
亡例,また,後遺症が残る傷害事故も1983-2009年度で276件あり,3割が授業中だったと
報告され明らかとなった。また2月6日のNHKのTVクローズアップ現代「‘‘必修化”は大
丈夫か多発する柔道事故」で報じられたように安全対策について十分であるのか検証し
ていた。

先日,アメリカンフットボール連盟安全対策委員である川又達朗日本大学脳神経外科教
授の講演を聴く機会があった。アメリカンフットボールでも,1970年代に死亡事故が多発
した。その後「脳震畳への分析・解明」「脳震畳への至らないための討議」が重ねられて,
1990年代にはほぼ死亡事故がゼロになった。脳震迫による「加速損傷」(頭部の高速回転
によって固い頭蓋骨と内側の柔らかい脳のずれが生じ,その間を結ぶ橋静脈の破損により
硬膜下血腫などが引き起こされる現象)に注意を払い,後方支援病院との協力関係の確立
や,安全講習会の開催が必要であると講演された。
柔道大国フランスでは指導者資格認定制度と認定試験ブルベデダと呼ばれる国家試験を
受験して,デュプロム(資格認定証明書)を取得しなければ,柔道指導を行うことは法的
に禁止されており,柔道での死亡者はゼロである。「愛知の柔道教員,6日で黒帯・30年
間全員合格」(読売新聞),「猛者揃い?わずか2日で柔道黒帯大分の体育教員研修」(朝
日新聞)と報じられており,安全の確保や指導者の確保等しっかりした体制が必要である0
安芸地区医師会の歴史を紐解くと,先達は①医の倫理②医学・医術の研鍵③医権の拡
大・医業の安定・親睦を掲げてきた。総会でも医の倫理については申し上げているが,今
回中四国厚生局から会員に戒告がなされ,診療所開設5年間停止処分を受けた。誠に遺憾
である。自浄作用委員会で検討していただくことになるが,当番医,学校検診そして患者
さん等のことは地区で話し合って協力していただきたい。
(平成24年8月)

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