2011年7月菅田巌 会長

夜,不如婦が鳴いている。「キョッキョッキョキョキョキョ!」と,けたたましい鳴き
声である。不如帰はインドから中国南部に越冬し,5月ごろに中国北部,朝鮮半島,日本
まで渡って来る渡り鳥であるが,自分で子育てをせず,ウグイス等に托卵する習性があ
る。野鳥図鑑によると「特定の番はつくらないといわれている。最近では托卵相手に悟ら
れ,卵を落とされるケースが目立ってきている。そのため,個体数減少の危機にあるとい
えるようだ。今後の調査に注目が置かれる」とある。托卵というと表現は良いが,結局は
ウグイスを騙すことになるが,最近では感づかれて個体数の減少をきたしているとまで言
われている。なんだか今の民主党政権の政治状況に似ている。内閣不信任案は否決された
が,菅首相の粘り腰までは鳩山前首相も読みきれず,混沌とした状況を生み出している。
自民党も「流星光底長蛇を逸す」と叫んでいる状況ではない。大連立も結局は元の木阿弥
である。

【社会保障と税の一体改革】
菅政権が発足して,ちょうど1年が経った。歴代の政権が先送りしてきた「社会保障と
税の一体改革原案」が政府の社会保障改革に関する集中検討会議で6月2日公表された。
それによると,
・自己負担額に上限を設ける「総合合算制度」の導入
(医療や介護,保育の利用者負担を合算)
・高額所得者の年金給付の見直し
・年金支給開始年齢の引き上げ(68~70歳)
・年金受給資格をもらえる加入期限(現在25年以上)の短縮
・社会保障費用に2015年度で新たに必要な財源は約2兆7,000億円
・2015年度までに消費税率を10%に段階的に引き上げる
等,消費税の引き上げとなる根拠を示している。政府は6月20日までに一体改革の最終案
をまとめて閣議決定する。

健康保険・介護保険の見直しの中には,受診時定額負担(1回100円)もあり,また医
療費の窓口負担(70~74歳)を2割に引き上げる等外来受診の抑制や高齢者医療制度の見
直しがある。日医の中川副会長は「受診の際に定額を負担する制度の導入」や「医療保険
の自己負担割合の見直し」については,「公的医療保険である以上,必要な財源は,広く
公費や保険料に求めるべきである。すでに,日本の患者一部負担割合は,公的医療保険が
ある先進諸国と比べてかなり高い。これ以上患者負担が増加すれば,受診を控え,重篤化
するケースも必ずや生じる」として,反対していく考えを示した。

【pTG(外傷後成長)世代】
3ケ月近く経た東日本大震災の被災者は,6月7日現在,死者は15,382人,行方不明者
8,191人,避難者93,270人となり,さらに福島原発の1・2・3・4号機のメルトダウンに
よる放射性物質の漏洩,放射能汚染は深刻な情況を呈している。
「文芸春秋」に立花 隆は「今回のような突然理由もなく人を襲いむごい大量死もたら
す大災害によって,多くの人がPTSD(心的外傷後ストレス障害)をうけている。過去の
事例では,東京大空襲やヒロシマ・ナガサキの原爆,また沖縄戦などであるが,これを体
験した父や母の世代はこれを乗り越えてきたといってもよい。あの,みな訳の分からない
理不尽な苦難体験,トラウマ体験を持って人生を始めた世代であるが,そのトラウマ体験
におしひしがれるのではなく,むしろそれを糧として成長を遂げるPTG(外傷後成長)
世代として生きてきた,PTG世代が戦後日本の繁栄を導いてきた世代である」と述べ,
そして「PTG第一世代の先輩として,きみらポストツナミのPTG第二世代がきっと日本
を再生させてくれるにちがいないと信じている」と述べている。
喫緊の課題は福島第一原発の放射能汚染を如何にくい止めるかである。この国家的な未
曾有の難局を乗り越えられるよう願っている。
今月23日に臨時総会を開催します。平成22年度医師会会計決算及び特定検診・特定保健
指導会計決算,総合介護センター会計決算報告,医師会館建替えの件案がある。よろしく
お願いしたい。                        (平成23年6月)

記事一覧へ