2011年5月菅田巌 会長

たんぽぽや 避難テントに 靴そろえ

渡辺真紀

新年度になり,本日の役員・地区代表幹事合同会議にお集まりいただき有難うございま
す。新しく代表幹事になられた先生方,また安芸市民病院からは横山隆前院長の後,新院
長になられた三好信和先生にもご出席いただいております。よろしくお願い致します。
さる3月11日に発生した福島,宮城,岩手,茨城等を中心とした東日本大震災は4月8
日で4週間となります。東日本大震災で被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げま
す。お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに,ご遺族に心からお悔やみ
を申し上げます。被災地城の一日も早い復興をお祈りいたします。

【JMAT】
県医師会では,震災後直ちにDMAT,HICAREを派遣し,現在日医が立ち上げた
JMATには順次5チームが宮城県石巻赤十字病院に派遣されている。lチームには,医
師,看護師,薬剤師,PT,事務職員等で編成され活動している。当医師会からもPTの
木村君が参加する。頑張ってもらいたい。被災地では,建物の損壊をはじめ,電気,水道
などが打撃を受けて,診療不可能な状態に陥った医療機関も多く,日医のホームページ
(東北地方太平洋沖地震‥情報提供)に放射能情報やJMAT派遣チームの情報はあるが,
医院等の情報収集の記載は少なく,被害の全容把握には時間がかかるようだ。

【貞観地震】
今回の震災は貞観(じょうがん)地震による津波と酷似し,1000年に一度の揺れでマグ
ニチュード9.0である。30数年周期で繰り返し発生すると想定されていた宮城県沖地震は
マグニチュード7.5クラスであるが,今回はその約90倍の規模で,95年に起きた阪神大震
災の約180倍のエネルギーであったと報じられ,4月6日現在,朝日新聞によると,死者
12,554人,安否不明者17,692人,避難者160,625人に達している。

貞観地震は「日本三代実録」(「国史大系」)貞観11年5月26日(西暦869年7月9日)に
記録され,「船に乗るいとまあらず,山に登るも及びがたし,溺死するもの千ばかり」と
津波の恐ろしさを語る文言が記載されている(保立道久一9世紀火山地震(5))。2007年10
月11日の読売新聞には「大阪市立大,東北大,東京大地震研究所などのチームが貞観津波
の痕跡を2004年から岩手県宮古市から宮城県気仙沼市にかけて調査し,新たに痕跡を見つ
け,日本応用地質学会で発表した」「範囲が大きく広がったことで,同津波を起こした地
震がマグニチュード8.6の日本史上最大とされる宝永地震(1707年)を上回るマグニチュー
ド9.0規模だった可能性が出てきた。国や自治体が行っている,東北の太平洋沖合にある
日本海溝付近を震源に発生が予想される大地震の被害想定にも影響が与えそうだ」と報じ
ている。今回の地震後3月27日の日本経済新聞には「産業技術総合研究所の研究チームは
東日本大震災前に,沿岸部の地質調査などから巨大津波の襲われる可能性を指摘し,対策
を急ぐよう警告していた。研究者は『あと数年先なら,もっと手を打てたはず』と肩を落
としている」と報じている。
4月3日読売新聞に「明治の教訓,15m堤防・水門が村守る…岩手」の記事が出てい
る。津波で壊滅的な被害を受けた三陸沿岸の中で岩手県北部にある普代村を高さ15mを越
える防潮堤と全長205mの譜代水門が守った。1967年当時の和村幸得村長(故人)は「明
治に15mの津波が来た」という言い伝えで「15m以上」を主張し,計画時には「高すぎ
る」と批判を浴びたという。

【放射能汚染】
現在喫緊の課題は福島第1原子力発電所の放射能漏れ(ヨウ素131,セシウム134さらに
高熱で溶け出すプルトニウム)で,冷却の安定化に向けて必死に作業が続けられている。
震災での原発は緊急停止,炉心冷却,放射能封じ込めが3大原則であるが,第一の緊急停
止はしたが外部電源が働かず,炉心溶融,水素爆発による建屋崩壊そして放射能漏れ等起
こした今回の津波について想定外であったとされている。

しかしロイターが入手した資料を基に,布施太郎記者の特別リポート「地に落ちた安全
神話一福島原発危機はなぜ起きたか」で「4年前に東電の原発専門家チームが,福島原発
施設をモデルにして日本における津波発生と原発への影響を分析した結果を2007年7月,
米フロリダ州マイアミの国際会議で発表した。今後50年以内に起り得る事象を分析し,高
さ13m以上の大津波は0ユ%かそれ以下の確立で起こりうる。また高さ15mを越す大津波
が発生する可能性も示唆。さらに米スリーマイルアイランド原発事故を踏まえ『原発では
設計や建設段階,運転管理などすべての段階で安全を確保しているが,そうした安全上の
想定を超え,さらに大きな事故が起こった場合に備えての対策』を整備する様,1992年に
原子力安全委員会が勧告している。炉心溶融というシビアアクシデントに対し,被害を抑
える措置が出来るように原子炉や冷却装置などのハードウエアを整備する。同時にそうし
たシステムを運用して対応すべきか,ソフト面の行動規範も定めている。今回東電の『ア
クシデント・マネジメント』には,非常事態を前提とした具体的な対応策が存在しなかっ
た。1号機に対する海水注入の決断の遅れも指摘し,初動を誤り,スパイラル的に状況が
悪化していく悪循環の中で,福島原発は大惨事に発展した。さらに政府もコントロール機
能が欠如している」と述べている。一方,日本原子力発電の東海第二発電所は安全に自動
停止したが,その後に津波に遭い,非常用発電機3台のうち1台が海水につかって停止し
た。日本原子力発電は2009年から,防波堤となる護岸のかさ上げ工事など津波対策を強
化。無事だった非常用発電機2台は対策を講じた場所にあったが,停止した1台があった
場所はまだ工事途中だった。3台とも停止していれば,福島原発と同じ事故につながった
可能性もあり,同社は「津波対策の工事をしていたため,残り2台の被害を防げた。今後
も対策を強化する」としている(読売新聞)。

「愚者は経験に学び,賢者は歴史に学ぶ」というのはビスマルクの言葉である。福島原
発はまだまだ予断を許さないが,世界の英知を集めて炉心溶融そして放射能汚染を限止し
ていただきたいと切に望む。
4年ごとに開催される日本医学会総会もWEBでの開催となり,他の学会総会もWEB
形式となっている。また計画停電等在宅患者さんや透析患者,手術等都市圏でも大変であ
る。

【備えあれば憂いなし】
当医師会では3月5日(土)に防災,福祉,医療の連携した支援体制の構築に向けて,
国内外の災害現場での看護のエキスパートであられるNPO法人阪神高齢者・障害者支援
ネットワークの黒田裕子理事長に「地域社会において必要な取り組み」~支援活を通して
~と題して講演していただき,改めて災害時における在宅療養患者さんで要援護者の避
難,特に心疾患や神経難病などで人工呼吸器を使用する患者や栄養補給などのためにカ
テーテルを装着する患者,人工透析など定期的な治療が必要な患者等電動医療器具を使用
する患者さんに対し,備えが必要であることを痛感した。
当医師会の当面の課題である①新公益法人制度への対応公益事業と定款の見直し②125
年史の発刊(彰検査センター処理後の医師会館の在り方一について,皆様の英知を結集し
て実行して行きたい。今後も会員の総意を大切にし,サステイナビリティそしてサバイバ
ビリティのある医師会運営を今年度も行うのでどうぞよろしくお願いしたい。
(平成23年4月

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