2011年12月菅田巌 会長

11月半ばを過ぎ,今年もあと1カ月半となった。日中は暖かく例年になく汗ばむ状態が
続いている。インフルエンザについては10月26日安芸高田市の甲田中学校で学年閉鎖が
あった。広島市では第44過でインフルエンザ様集団かぜ2件発生し,インフルエンザウイ
ルスA香港型を検出されている。健康管理に気を付けて頂きたい。
「受診時定額負担」の反対する署名運動について,是非会員の総力を挙げて取り組んで
いただきたい。宜しくお願いしたい。

【TPPと国民皆保険制度の崩壊】
昨年11月横浜で開催されたアジア大平洋経済協力会議(APEC)で環太平洋経済連携協
定(TPP)について,当時首相であった菅首相は「平成の開国」と述べ,参加を表明して
物議を醸していた。貿易立国として困難を伴うのはいつの時代も同じである。菅首相は環
太平洋地域の自由貿易圏の経済連携協定(FTAAP)を約束したが,これはサービスの移
動や労働環境の国際化,知的財産権のルールの統一なども含まれる包括的な協定で,
FTA(自由貿易協定)のように物品の移動に限らないため多国間のEPA(経済連携協定)
と言われている。TPPにおいては,韓国,中国は参加していない。参加国のGDP比は日
米だけで9割を占めているため実質2国間協定と言われている。野田首相はホノルルで開か
れたAPECで交渉参加に向けて関係国と協議に入ることを表明した。
日本医師会はこのTPPについては,①外国資本を含む企業などの日本の医療への参入
②外国人医師の受け入れ ③営利目的による外国人患者の治療 ④混合診療の全面解禁一
等についての問題点を挙げ,国民皆保険の堅持,医療の安全と安心の確保が約束されない
限り,TPPへの参加に反対を表明している。現在参議院予算委員会においてTPPでアメ
リカとの交渉に対してどのように表明したのか討議がされている。広島地域では輸出産業
であるマツダは円高に苦しんでおり,思案のしどころである。

【5疾病5事業】
平成19年に施行された改正医療法により,医療計画制度の下で,いわゆる4疾病(がん,
脳卒中,急性心筋梗塞,糖尿病),5事業(救急医療,災害時における医療,へき地の医
療,周産期医療,小児救急医療を含む小児医療,その他)ごとに,現在,圏域ごとに医療
提供体制の構築が行われている。がんに対しては,乳がん,肺がん,肝がん等着々と進め
られている。海田地域においてもがんはもちろん,脳卒中についてはほぼ整理され,12月
急性心筋梗塞について次回地対協にて話し合われる。

今年の7月6日に開催された社会保障審議会医療部会で,精神疾患をこの医療計画に記載
すべき疾患に追加された。4疾病5事業から5疾病5事業となり,厚生労働省は省令を改正
し,2013年度以降の医療計画に反映させることとなった。精神疾患は2008年の調査で患者
数が323万人とがんの152万人の2倍に達し,現行の4疾病で最も多い糖尿病の237万人をも
上回っており,近年職場におけるうつ病,高齢化による認知症の増加など国民に広くかか
わる疾患となり,精神疾患による死亡は年間1・1万人,さらに年間3万人に上る自殺者の9
割が,何らかの精神疾患を患っている可能性が指摘され,緊急性も高い。

自殺者は1998年以来13年連続で3万人を超えており,50~60歳代の自殺が減る傾向にあ
るのと反対に20歳代の若者自殺が増える傾向にある。
週刊朝日9月9日号で「『医療崩壊』から立ち直った英国に学べ 自宅訪問で自殺率低下
先行く英国精神医療毎年3万人以上自殺する対策後進国・日本」と題して地域(コミュ
ニティー)の基幹的なメンタルヘルスセンターを通してサービスを提供している記事が
載っていた。早期介入チーム(看護師6人,医師2人ソーシャルワーカー,作業療法士,心
理士・秘書各1人の13人からなる多職種構成チーム),危機解決・家庭治療チーム,積極的
訪問治療チーム体制・そしてブレア政権の予算の増額・GP(家庭医),上級精神科医・精
神科看護師・臨床心理士の増員,さらに家庭医を助ける「トキング・セラピスト」が,
話を聞いて,社会で支えあっていくという体制である。「トキング・セラピスト」とは
うつや不安を抱える人を対象とした心理療法のトレーニングを受けた人たちで,精神科看
護師,ソーシャルワーカー,作業療法士など,一定のプログラムを終了すれば認定を受け
ることができる。日本の10万人当たり24・0人(2008年)の自殺率に対して,英国は6.4人と
日本の4分の1である。そして1995年に比べ2005年には15・2%の減少に成功している。多職
種で支える体制が必要であろう。

【労働基準法・36協定】
時間外労働や休日労働がある場合・労働者が一人でもいる事業所は,事業所ごとに時間
外労働協定書(労働基準法第36条・36協定)を締結し,管轄の労働基準監督署に届け出を
しなければならない。時間外も休日出勤も従業員一人ひとりでの時間手当を換算して出す
必要があり,後程出てくると思うが・事務局,訪看,居宅,ヘルパー事務職員,我々医師
会員も組織とともに勤務体制や委員会等を含め経営について考えていく必要がある。
(平成23年11月)

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